オレキシンと覚醒のはなし『睡眠と生体リズム#7』
【introduction】
前回の
覚醒における脳内メカニズムについての話で
オレキシンについて少しだけ触れました。
1998年頃に発見された、
今回もヒトが
起きたり寝たりする仕組みの解説です。
今回で『睡眠と生体リズム』シリーズは最終回となります。
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この記事の要約
オレキシンが覚醒にとって重要
なぜオレキシンが起きていることに
重要なのかと分かってきたかと言うと、
ナルコレプシー患者を調べたことからです。
ナルコレプシーは起きている状態からすぐに眠ってしまう症状です。
それで、ナルコレプシーの患者と健常者の視床下部のオレキシンを調べました。
健常者にはオレキシンを含んだニューロンが視床下部にたくさんあります。
この研究で
「起きているためにはオレキシンが必要だろう」
とわかったのでした。
また別の研究からも
脳脊髄において、ナルコレプシー患者ではオレキシンが少ないとわかっています。
覚醒についての仕組み、関係性について
オレキシン含有の神経細胞の軸索が脳の広範囲にのびているとわかっています。
視床下部から
青斑核、縫線核、結節乳頭核にのびています。
覚醒の親玉(スーパーバイズ)といえます。
睡眠・覚醒のフリップフロップ仮説
〈覚醒中枢優勢時〉
睡眠中枢ともいえる、
腹外側視索前野 ふくがいそくしさくぜんや
(前部視床下部)
があります。
GABAを放出する脳部位です。
覚醒中枢優勢のとき
オレキシンがGABAを抑制し、覚醒しています。
〈睡眠中枢優勢時〉
では睡眠の時はどうなっているのか。
腹外側視索前野が睡眠の時に優勢となり、
GABAによって
オレキシン、オレキシン含有ニューロン、青斑核、結節乳頭核、縫線核などの
覚醒中枢が抑制されます。
ですから、睡眠でも覚醒でも中途半端な状態はない
というのがフリップフロップ仮説です。
睡眠と覚醒に関するスイッチ仮説ともいいます。
覚醒のオレキシン含有ニューロンが活性するのか、
睡眠の腹外側視索前野が活性化するのか、
視交叉上核の命令によるものとなります。
視交叉上核が日内変動しますから、
それにともなって
どちらの系が活性化するかで我々は起きたり寝たりすることになります。
レム睡眠の神経機構
ネコの
小脳破壊、
大脳皮質破壊、
大脳皮質と間脳破壊、
橋の破壊
の4つの区分に分けて
レム睡眠の特徴をそれぞれで調べる研究です。
小脳破壊ではレム睡眠の特徴はありました。
大脳皮質破壊、大脳皮質破壊と間脳破壊のケースでは
脱同期脳波の反応が取れませんが、
そのほかのレム睡眠の特徴があります。
橋を破壊すると
レム睡眠の特徴が消失します。
橋の活動がレム睡眠に関係しているということが現在わかっています。
全体的なまとめ
概日リズムを司る脳内メカニズムとして
視交叉上核が重要であるということ
深く寝ている人は意識がありません。
睡眠研究は
人の意識があるとか、
人の意識を知るうえで有望な研究テーマなのです。
【outroduction】
オレキシンという神経伝達物質についての話と
フリップフロップ仮説についての解説でした。
私が『睡眠と生体リズム』1~7を書いていて
印象深かったことは『睡眠と生体リズム#5』に
脳に電圧をかけてノンレム睡眠をとれるようにして
起きた時にテストをすると成績が上がるという話です。
興味深いなと思いました。
番組情報
放送大学bs232
生理心理学 第10回 生体リズムと睡眠 より
2021年12月6日
最後までご視聴ありがとうございました。
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