はじまる!はじまる!光を見てはじまる概日リズム『睡眠と生体リズム#3』
【introduction】
朝起きて太陽の光を浴びると1日のはじまりです。
そのころ脳の中では
「勝手に動くんじゃーない」
「今ですッ!」
脳の中には細胞の同期をとっている視交叉上核がいました。
…。
前回、体内で時計の役割をしている脳部位、
視交叉上核を解説してきました。
引き続き、視交叉上核についてです。
視交叉上核の「核」の意味するところは
細胞の集まりです。
視交叉上核が全体として神経回路網として時計の機能をしているのか?
一個一個のニューロンのレベルで時計のような機能をしているのか?
という研究を私なりに解説します。
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この記事の要約
- 個別で動く神経細胞を同期させている視交叉上核
- 生理心理学 第10回 生体リズムと睡眠 より
組織培養における視交叉上核の発火頻度
ラットの脳の培養標本にして一個一個のニューロンの記録を取り調べたところ、
視交叉上核の一個一個の細胞が時計の役割をしていることがわかりました。
一個一個の細胞の毎秒ごとの神経活動を縦軸にして
横軸は経過時間(72時間分)を取ります。
それぞれの細胞が、24時間ごとに活動する時、しない時というグラフの波であらわせられます。
視交叉上核の一個一個の細胞が周期的、つまり時計の役割である、とわかりました。
そのほか別の研究からも様々な細胞がそれぞれのタイミングで
タンパク質を作ったりしている(遺伝子発現)ということがわかりました。
時計遺伝子は別の実験で同定されています。
時計遺伝子は概日リズム(体内時計)の遺伝子のこと。
細胞の同期
しかし、各々の細胞は別のタイミングで活動しているかのような表グラフになります。
脳から取り出して組織培養された細胞は一個一個が好きなタイミングで活動しています。
細胞は視交叉上核の中にいるときは同期しています。
細胞同士を同期させる信号は…
ひとつとして、同期の信号は光だと考えられます。
昼間は明るく夜は暗い、
これが同期の信号であると考えられます。
メラノプシンを含む神経節細胞
今世紀に入って、メラノプシンという物質が重要だとわかってきました。
網膜の中にメラノプシンを含む神経節細胞があります。
メラノプシンは…
・光照射によって活動電位が生じる
・メラノプシンを含む神経節細胞は軸索(神経細胞から発す一本の長い突起)を視交叉上核に送っている(網膜視床下部路)
・視交叉上核の神経細胞の同期を司る
(⇒遺伝子工学的手法を用いて、
メラノプシンをを少なくしたマウスでは視交叉上核での神経細胞の同期が落ちます)
概日リズムを司る機構
光
↓
中枢時計(視交叉上核)
↓ 末梢時計の同調因子(周期的給餌など)
↓ ↓
末梢時計(脳や抹消の臓器)視交叉上核の命令で動く
↓
表現型のリズム
(睡眠・ホルモン分泌の日内変動・行動・体温変化の日内変動・その他)
表現型⇒目に見える形ってこと、例えば睡眠です。
【outroduction】
取り出した細胞はそれぞれの周期を持ち活動します。
脳の視交叉上核の中では同期しています。
同期させている信号は主に光です。
次回
表現型の中でとくに精神機能にかかわりのある睡眠について
番組情報
放送大学bs232
生理心理学 第10回 生体リズムと睡眠 より
2021年12月6日
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